1人前のすし職人と言われるために必要な6つのこと  モーリーブログ

海外への移住を目指して寿司を勉強し始める人が多いです。
実際にアジアの成長著しい地域では
「これが寿司??」と思うようなものが結構な高値で売られていて
これまた結構な賑わいを見せていると聞きます。

日本人の職人が握るすし店ならさらに良い価格で商売しているわけです。
「すし屋を出すと面白いな・・・」と思う日本人は多いのでしょう。
私の所にも香港で店を出すからやらないか、などの話がちょこちょこ来ています。

一方、日本では将来への不安といったものが世の中を覆っていて
自分の将来に手詰まり感を感じている人たちが沢山いたりするわけです。

二つの流れが一つになって
「寿司を覚えて海外で一発当ててやろう」と思う人が湧き出てくるのは
ある意味で自然な流れなのでしょう。

私が生徒たちに常々言っているのは

「ならきちんと技術を身につけてから行きなさい」

ということです。
「きちんとした技術」とは大まかに次のようなことを言います。

1、食材や魚全般のおろし、保存などの扱いが正確で早いこと
2、仕込もの(穴子、玉子、干瓢、オボロなど)がきちんとできること
3、にぎり、巻き、刺身などの商品を早く、きれいに提供できること
4、商品管理(先入れ先出し、衛生、整理整頓など)がしっかりしていて、忙しくても仕事場が散らからないこと
5、時間管理、挨拶、会話など大人としての社会常識があること

そして何よりも大切なことは

6、「お客様に喜んでいただくことが嬉しいと感じる」こと。

どれか一つ欠けても即戦力とは言えません。
一つ一つ見てみましょう。

1、食材や魚全般のおろし、保存などの扱いが正確で早いこと

これはもう当たり前ですね。
「魚が下せます。」なんて屁のつっぱりにもなりません、当たり前です。
魚と言ってもいろいろです。アジやタイ、ヒラメは勿論、穴子や貝類、海藻類や海苔などの乾物にも、それぞれ扱いの知識が必要です。更に、保存や温度管理の知識や技術がないと、4日間使える魚が2日でダメになるなんて普通にあることです。また、なんでもカンでも高価なペーパーで巻いてラップを何重にもかぶせることが「丁寧な商品管理」と思っている人もいますが、消耗品代が嵩むばかりか、冷蔵庫の冷気が商品に届かずに却って悪くしてしまったり、水分を吸い取り過ぎて魚の味を奪ってしまうことも多々見られます。
やはり適切な管理を覚えることが、時間短縮やごみの量を減らすなどの観点からも必要になってきます。
もう一つ。
魚の鮮度が分かることも重要です。
「モーリさん、この魚明日も使えますか?」という質問を良くされます。
職人は魚を下しながら、今日中で使い切ろう、とか、明日も大丈夫だからこっちの魚よりはあっちの魚を重点的にお奨めして行こう、とか決めていきます。
ここらが分からないと生の魚を扱うのは厳しいです。

2、仕込みものがきちんとできる

寿司屋は生の魚だけ扱っているわけではありません。玉子焼きもありますし、カンピョウや、チラシに入れる椎茸なんかも扱います。きちんとした店ならオボロも自店で仕込むものです。これらを商品レベルで作れなくてはいけません。よくレシピを必死に覚える人がいますが、砂糖や味醂の量は入店先で決めればいいことです。多くの場合すでに決まっています。問題はそれを作る知識や技術があるかどうかです。
今はこれらを買ってくるお店が多いようです。だからと言って作れなくていいわけではありません。出来ない、と、やらない、は大きな違いです。

3、にぎり、巻き、刺身などの商品を早く、きれいに提供できること

「早く・きれいに」がキーワードです。もう説明の必要はありませんね。
あなたが寿司屋に行って、にぎり一人前を注文して、5分まったら多分イライラしてきますね。合格の最低ライン

にぎり1人前(10貫程度)1分30秒以内
細巻3本1分30秒以内

です。

4、商品管理(先入れ先出し、衛生、整理整頓など)がしっかりしていて、忙しくても仕事場が散らからないこと

これができない生徒が非常に多いです。
通常飲食店の厨房や寿司店のつけば(カウンターの中)は狭いものです。狭い空間で最大限のパフォーマンスを発揮するには、食材や器具、ラップなどは決まった位置に必ずなければなりません。しょっちゅう使うラップなどは見なくても手を伸ばせばそこにある、くらいの正確さです。食材もそう、同じものが二つあったら手前から使う、などの約束事が必ず必要で、またそうなっているハズです。でもこれが出来ない・・・。使ったらもとの位置に、新しい食材はアニキ(古い食材)の奥に(又は下に)入れる、などの約束を、忙しい中で確実に行っていくことが求められます。
また、使ったまな板が汚いままだったり、食材が入っていたビニール袋がシンクに置き放しだったりすると、次の人が片づけから入らないといけなくなり、作業が遅くなります。
二度手間を排除したり、足の使い方(ステップ)を工夫したりするなど、それなりに経験が必要になります。

5、時間管理、挨拶、会話など大人としての社会常識があること

何度も言ってきていますが飲食はチームワークが大切です。団体競技なのです。そしてある程度お客様からお金をいただくような商売の場合、スタッフがあまりにも子供じみていると、店舗全体のバランスを欠いてしまいます。
礼儀正しく、真面目で明るい、そんなスタッフ像をいつも頭に描いて、そこに近づけるように努力することが大切です。
仲間に気を配り、「良い空気」のなかでお客様を迎えようと努力することはプロとして欠かせない要素です。まして、自己都合で遅刻や欠勤がたびたびあるなどは、すし職人のまえに社会人としての自覚があるか、仲間を大切にしているか、という問題なのです。

6、「お客様に喜んでいただくことが嬉しいと感じる」こと。

飲食に努めることを「海外移転のツール」とか「自己実現」のように言う人が多いです。すべての人がそう、というわけではないけど、私は違和感を感じています。
サービス業であるということは、とにもかくにもお客様にサービスを提供することで成り立つ商売です。そこに「理屈抜きの喜び」が全くない人は、飲食には向いていないと断言できます。海外には行きたくても別の方法を探すべきです。

「いらっしゃいませ」や「ありがとうございました」などの基本的な接客用語を
1年たっても上手に言えない人がいます。上手に言えない、とはお客様に響くように言えない、ということです。独り言で言っても意味は無いですね。
1年間勤務していても言えない、ということは「その気がない」のです。
感謝がない。
あるのは自分だけ。
こういう人は得てして仲間もいません。
自分以外のモノをや人を大事に思わないからです。
自分の気持ちを相手に届けようとするとき、穏やかな表情にならない人はいません。
いちいち「笑顔」なんて言わなくても、「その気」があれば
自然と柔らかい表情を浮かべるものなのです。
柔らかい表情で、お客様に届け!と気持ちを込めて言えば、素晴らしい
「ありがとうございました」になるのです。
「お待たせいたしました」も断然心に響く言葉に変身します。
でもできない。
気持ちが無いからなんです。素より、最初から上手に言える人はいません。
滑舌が回りにくい言葉だし、殆どの人が初めて使う言葉だからです。
でも通常はどんどん上手になります。1年もたてば後輩にしっかり教えられるレベルには普通になるものです。
飲食に携わる者のハートを知ってください。

ここでもう一度言います。
1~6、どれか一つでも欠けていたら実際の現場で満点の働きは出来ない可能性が高いと思ってください。
海外でも国内でも
「ああ、本当にいい人が来てくれた」と喜んではもらえない、ということです。

半人前は半人前の給料しかもらえないのです。
いわんや半端な実力を頼りにどこかの国で
「現地としては高給取り」程度の待遇で3年ばかり過ごしたとします。
帰国したときどんな生活が待っているのでしょうか。

結局日本でも海外でも
「一軒任せられる人材になる覚悟」がなければ
飲食でやって行くのは厳しいのです。

きちんとした技術を持ってから海外へ行ってもらいたい。
少しくらい遅くなっても日本で一人前になってから海外に行ってください。
そして夢の海外生活で人生を楽しんでもらいたいです。

そうすれば、もし海外がダメでも
自分の店をもって日本で稼げます。
海外移住のために寿司を勉強している、なるべく多くの人にこれを読んでもらいたいです。